2019年以前

 北陸新幹線(敦賀・大阪間)延伸工事については、時折、新聞報道等で話題にあがることはあったが、実際のところ、どういったルートを通るのか、どこに駅が出来るのか、またどんな工事になるのかなどの具体的な情報はほとんどの国民には見えていなかった。

「なんだかんだ行っても何十年も先の話だろう」
「実際どこを通るか分からない」
「そもそも本当に新幹線が通るのか」
将来的にコースに関係する地域住民からしたら、延伸問題に関してはこの程度の認識でいた人がほとんどであったのではないだろうか。

そして、2019年5月末日

 事業者である鉄道・運輸機構が、国交省に概略ルートを提出したのを切っ掛けに、この問題がはっきりと表面化した。これまでいくつか検討されていた複数の案から、(多分)一番難工事が予想される、小浜〜京都市内〜新大阪の概略ルートが決まったのである。この工事は、京都府の誇る自然豊かな地域、特に丹波高原国定公園をはじめ、京都府中北部の山間地を長大トンネルを掘削するだけでなく、京都市内に大深度トンネルを建設するなど、コースのほぼ大部分をトンネルにする計画だった。さすがにこれには、発表当時、各方面から大きく懸念点が指摘されていた。

 それでも、まだコース予定に該当する地域住民には、この事業そのものの詳しい内容は説明されていなかった。

そして2019年11月半ば

 SNS上に「美山町で新幹線工事に関する環境影響評価方法に関する説明会がある」という情報が流れてきたことを機に、京都府におけるコース該当地区の最北地である美山町住民が、初めて「工事が静かに進んでいる」という実感を持ち出したのである。ただ、11月14日、15日の二日間にわたって、美山町文化ホールで行われた説明会には、二日間あわせて20名程度の参加者しかいなかったのだ。
 なぜ、このような重要な説明会に、多くの人が集まらなかったのか。それは、そもそも、工事そのものや、住民参画の機会を求める告知が不十分であることに他ならない。

実際にこの説明会を受けて知った問題点は以下

  1. 工事のみならず事業に関する説明が、コース該当住民に対し、これまで十分に行われていないこと
  2. 工事に至る手続きの中で、配慮書などの手続きはすでに済んでおり(5月)、すでに住民が意見を言うことのできる貴重な機会を1回失っていること

この事業への賛否はともかく、工事によってなんらかの生活や自然への影響は必至である。だからこそ、市民の「知る権利」「意見を述べる権利」が大切にされるべきであるにも関わらず、実態としては著しく損なわれている懸念がある。

加えて、今回の環境評価影響書に関する説明会について、さらなる大きな問題は

  1. コースに該当する京都市右京区京北町の住民には、説明会すら開かれていなかったことで、住民のこの問題への認識は皆無に等しい状況であったということ
  2. 説明会の質疑応答で多くの市民が質問したことにより、工事によって引き起こされる、本当の影響が徐々に明らかになってきたこと(つまり説明が不十分)

などである。

 これを受け、まず美山町住民が中心となって環境評価方法書に関する意見を言う機会があることの周知を行い、コースに該当する住民か否かを問わず広く意見を求めるため、「北陸新幹線(敦賀ー新大阪間)延伸問題を考える〜北陸新幹線延伸事業への意見提出にご協力お願いします。」というサイトを制作、多くの方へ意見提出を求め、さらにはその意見から送られて来たものを掲載するに至った。

北陸新幹線延伸事業への意見書提出に、ご協力をお願いします。
「そもそも北陸新幹線の工事って?」「意見書って?」という方へできるだけ、わかりやすく説明します。

実際に提出されて意見書(共有の許可をいただいた方のみ)